淡彩日記
ほとけ心を抱きしめる
心には居場所が必要です。弘法大師空海さまも若かりしころ、心の居場所を求めて修行に励まれました。心の拠り所がない苦しみ、心の置き所がない寂しさを誰よりも理解していらっしゃるのが弘法大師さまです。
あなたの心の本当の置き所は、誰にも妨げることのできない虚空の世界にあります。それを仏教では真如といったり、涅槃といったりします。
そこにあなたの一番大切な心を置けば、どんな天魔もあなたの心を傷つけることはできません。全ての仏さまは心を涅槃の世界においています。
諸行無常というからといって、あなたの心の一番大切なところまで、苦しみの海の中にとどまらせることはないのです。仏さまが苦しみの海にお姿を表すとしても、そのお姿は本体ではなく分身であって、仏さまの心の本体はあくまで涅槃の世界にとどまっていらっしゃいます。だから仏さまはどんな苦しみの世界に現れても、苦しみに沈むことはありません。
あなたが、この世での苦しみの只中にあるときこそ、誰にも傷つけられることのない、真如の世界、言い換えれば涅槃の世界とのつながりを忘れないで下さい。仏さまのぬくもりを受け取って、あなたの心にぬくもりを当ててください。あなたの心がしっかりと温まるまで、それを離さないでください。
私たちは、仏さまに心を込めてお参りした結果、仏さまから温かい心をいただいたとしても、自分の心がしっかりと温もりきる前に、慌てて仏さまにそれをお返ししてしまいがちです。
私たちが仏さまからいただいたぬくもりを返すのは、自分の心を素直に仏さまの世界に置けるようになったとき、言い換えれば心を涅槃の世界に置けるようになった時でいいのです。
只々、ありがたい、ありがたいと、心を込めて、心をあたためてください。
体も心も冷え切っている時は、まずは湯たんぽをあたためて、それをじっと抱きしめてもいいでしょう。体が温まるにつれて、心も温まりやすくなるはずです。
心ゆくまで、自分の心を大切に温めていいのです。心を真に安らげる居場所は、仏さまの世界に必ずあるのですから。