淡彩日記
ありがたいことに、詳しすぎる話でも、熱心に聞いてくれる人は、聞いてくれる
3月19日、諫早で無事お話会が終わりました。
「今度、お話会しましょう」と企画が持ち上がったのが2月のことだったので、約一か月の準備期間でした。
「古事記の前の話をしよう」となったので、最初は大日如来と、大神宮の契約の話をしようくらいに軽く考えていたのです。
ですが歴史の資料をたくさん集めて話をしようとすると、聞いている方の心に悲しみが募るかもしれません。せっかく聞いても暗くなる話で終わるのは残念です。
「過去の歴史は分かりました。では、今を生きる私たちはどうしたらいいのですか」という感想をいただくかもしれません。
そういう時、私は歴史学者ではなく僧侶なので、仏教の中で何とか安心してもらえる方法がないかと頭を捻りました。
そこで、今回初めて「倶舎論(くしゃろん)」という仏教の教えを詳細にまとめた本から「心の中の地図」をまとめて資料にして、皆さんと一緒に読んでみることにしました。
『仏教は宇宙をどう見たか―アビダルマ仏教の科学的世界観』『仏教の思想 2 存在の分析<アビダルマ> 』『ダライ・ラマの仏教哲学講義―苦しみから菩提へ』という本を参考にしながら、資料作成に3日かかり、印刷しようとしてビックリしました。A4サイズ3枚に分割して印刷しても字が小さすぎて読めません。
仕方ないのでキンコーズに行ってA3サイズ2枚に分割して印刷し、A2サイズで皆様にお配りすることにしました。
実際の資料は下のファイルです。お寺でもこの資料の中身についてお話しできますので、興味がある方はご連絡下さい。
当日は古事記ができた頃の神話と、元寇の時代に神話がリニューアルした話をした後、心の地図の説明に入りました。75もある心の中身を一つ一つ読み上げるだけでも1時間くらいかかります。参加した方にとって初めて聞く言葉がたくさんあるはずですので、話すこちらも分かりにくくないかなと心配になります。ドキドキしながら一生懸命話します。
開始から2時間経過した後も、みなさんに質問を随時していただきながら納得いくまで聞いていただきました。参加していただいた皆様の興味関心のレベルの高さと熱意と忍耐に、こちらも心を励まされながら話をすることができました。本当に頭が下がり、有難いと思える時間でした。
次回の機会に向けて今日『全訳 ダライ・ラマ1 世 倶舎論註『解脱道解明』』を注文し、早速資料を手直しして行こうとした時、斎藤明先生によります、仏教用語の現代語化についてまとめられたホームページに辿り着きました。
「五位七十五法関連用語の定義的用例集」(レイアウトの関係でパソコンで開くのをおすすめします)
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~b_kosha/html/index_75dharma.html
こちらのホームページを参照させていただき、資料を今後さらに改訂してまいります。
今思うと、「法を説くことを惜しまない」という戒律があるにもかかわらず、「最近は、やさしく便利で早く分かりやすいものが求められがちだ」という風潮に流されて、詳しい話をすることを諦めてしまっていたように思います。
今回、どれほど詳細であっても、難解であっても、聞いてくださる方は必ずいらっしゃると思えるようになりました。
2時間以上も熱心に話を聞いていただいて、安堵しています。
そして今後、般若心経の話や、唯識、中観、法華経、華厳、密教の話や、弘法大師様の話など、少しずつでも資料をまとめて、聞いてくださる方と出逢いながら、歩みを進めていくことができましたらと密かに願っています。どうぞお題を出していただきますと、励みになります。
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。